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生活保護は、新聞やニュースでよく取り上げられる話題です。しかし、生活保護を受けたことのない人や、受けようと考えたこともない人にとってはあまり身近に感じられない話題かもしれません。「税金に頼って生活するなんて嫌だ」というネガティブなイメージを抱く人も多いでしょう。

今回は、意外と知られていない生活保護の知識について解説します。

そもそも生活保護ってどんな制度?

生活保護は、一定の要件を満たした人に対して行政が生活費などの名目で金銭を支給する制度です。基本的に、病気で働けない人や仕事が見つからない人、働いていても生活が苦しいため補助を必要とする人が生活保護を利用しています。

東京都内で一人暮らしをしている人が生活保護を受給する場合、だいたい1ヶ月に13万円ほどを支給されることが一般的です。これは、憲法で規定されている「健康で文化的な最低限度の生活」のために必要な金銭が月およそ13万円だということを国が定めていることになります。

生活保護の受給が認められるためには、行政の審査に通らなければなりません。審査に通るための要件には、申請者の収入が自治体の定める最低生活費を下回っていること、申請者の貯金が最低生活費の半分を下回っていること、土地や車を持っていないことなどがあります。

この要件は意外に厳しく、働いていなくても一定の貯蓄がある場合には貯蓄を切り崩さなければ生活保護を受けられない場合などが想定されます。また、通勤と通院以外の目的で車を持っている場合には受給を認められない可能性が高いので、生活保護を受けることによって生活に支障が出てしまうケースも少なくありません。

生活保護によくある誤解

生活保護にありがちなこととして、「不正受給が多い」という誤解があります。ニュースなどでは、生活保護を不正に受けながらぜいたくな暮らしをしている人が取り上げられることもありますが、実際の生活保護の不正受給は金額ベース・人数ベースともに全体の1%前後です。

もちろん、生活保護を不正受給して怠けている人が全くいないわけではありません。しかし、一部の例を見て、すべての生活保護受給者が悪者であるかのように理解するのは間違いです。また、問題になることは多くありませんが、実際には生活保護を受けられるはずなのに役所で申請を断られてしまうというケースもあります。

これは、行政が税金の支出を節約するためにとっている「水際作戦」という対応によるものです。要件を満たしているか否かに関わらずどんな人でも生活保護の申請は可能なのですが、役所の窓口で「仕事を探しなさい」「あなたは生活保護を受けないほうがいい」などと言われて申請できずに諦めてしまう人もいます。

上記のように、役所が申請を断ってしまうことは本来ならば違法です。しかし、生活保護申請者が役所の対応に口出しをすることは難しく、多くの人は制度についても知識がないので、こうした問題はなかなか表面化しません。

非正規雇用で働いている人の中には、生活保護水準以下の収入で生活している人もいます。生活保護に関する間違ったイメージや窓口のまずい対応があることによって、生活保護を受給できるはずの人もなかなか受給できていないのが現状です。

借金をしていても生活保護は受けられる?

もともと生活保護を受けていなくても、借金によって生活が苦しくなり、生活保護に頼ることを検討している人もいるでしょう。本当は、生活費を賄うのが目的であれば借金をするよりも生活保護に頼ったほうが得策です。しかし、多くの人は自分が生活保護を受給できるかどうかがわからないため、困ったときにはまず借金をしてしまいます。

生活保護の審査にあたっては、借金があることを理由に申請を却下されることはありません。通常の場合と同じように、収入や資産の状況に応じて受給の可否が判断されるので、収入や貯蓄が一定の水準より少なければ生活保護の受給は認められる見込みが高くなります。

ただし、借金返済のための保護費が支給されないことには注意が必要です。あくまで生活保護は生活を補助するための制度なので、仕事などによる収入が最低生活費に満たない場合に足りない分を補助するという制度設計になっています。

また、生活保護を受けている間は収入を必ず申告しなければならないため、新たな借金をすることは事実上できません。そのため、借金の返済に関しては生活保護費に頼るのではなく、別の処置を講じる必要があります。

関連:借金を自力で返す方法と注意点

生活保護と並行して債務整理をしよう

そうは言っても、生活保護を受ける水準の人が借金を自力で返すのはそう簡単ではありません。

数万円程度の借金ならともかく、数十万円やそれ以上の借金はとても自力では返済できないでしょう。そのような場合は、弁護士に連絡して債務整理をするのが有力です。

債務整理には一定のリスクもありますが、返せない借金を膨らませ続けるよりはマシです。カードローンのリボルビング払いなどは、返済を引き延ばすにつれて利息が増える仕組みになっているので、解決方法を考えている間にもどんどん借金が膨らんでしまいます。

無料もしくは安い金額で相談を受け付けている弁護士もいるので、自力で借金を返済するのが難しいと思ったらすぐに相談しましょう。

関連:国の借金である国債で資産管理を行おう

生活保護を受けるときの注意点

先ほども述べたように、生活保護は役所の窓口で申請を断られてしまうケースが多々あります。生活保護を申請したいときは、申請の意思をはっきり示すようにしましょう。口頭で申請するのも有効ですが、書面を窓口に提出するのが確実です。

申請の意思を示さなかった場合、役所から単なる「相談」として認識されてしまい、受理してもらえない可能性があります。まずは申請を通して、審査のステップに進ませることが何よりも重要です。それでもうまく申請できなかった場合は、生活相談を受け付けているNPO団体などに頼りましょう。

専属スタッフが窓口での申請に同行し、サポートしてくれるNPO団体もあります。また、生活保護受給に関する法的な知識も、調べるだけではなかなか理解できないときには専門の相談機関に質問するのが確実です。生活保護は一般的には良いイメージを抱かれていませんが、「最後のセーフティネット」と呼ばれるだけあって、いざとなったときにはとても役に立つ制度です。

困ったときの選択肢として考えておくとよいでしょう。